「市民の力では市政を変えることはできないし、市の正職員も市のために奉仕している人はごくわずか」この言葉を聞くと、多くの人が「いや、選挙があるじゃないか」と反論したくなるかもしれません。
確かに、市政を決めるのは市長や市議会議員であり、それを選ぶのは市民です。しかし、現実的に考えると、選挙だけでは市政を大きく変えることは難しい構造になっています。また、市の正職員の働き方を見ると、必ずしも市民のために動いているわけではないという実態もあります。今回は、市政を変える難しさと選挙制度の問題、市職員の実態について掘り下げてみましょう。
1. 選挙システムは本当に市民の声を反映しているのか?
地方自治体の選挙には、市長選挙と市議会議員選挙があります。どちらも市民が投票して選ぶ仕組みですが、実際には以下のような問題があり、市民の意見が反映されにくい構造になっています。
(1) 投票率の低さ
市議会議員選挙の投票率は全国的に低く、40%を下回ることも珍しくありません。つまり、投票する市民の声しか反映されず、政治に無関心な人が多いほど、特定の組織票を持つ候補者が有利になるのです。
(2) 組織票と固定票の影響
地方選挙では、特定の団体(労働組合、業界団体、地域の有力者グループなど)が組織票を持っています。これらの団体は一丸となって特定の候補を支援するため、市民の一般的な意見よりも、特定団体の利益が優先される傾向があります。
(3) 市議会の役割と限界
市議会議員は、市長の政策をチェックする役割を持っていますが、議会が機能していない場合、市長の独裁的な運営が続くことになります。また、議会での意見が対立しても、多くの議員は「前例踏襲」や「事なかれ主義」に従うため、大きな改革が進まないことが多いです。
(4) 住民投票のハードルの高さ
市民が直接意見を反映させる方法として住民投票がありますが、実施には一定の署名数が必要であり、そのハードルは非常に高い。また、たとえ住民投票が行われても、市の方針を拘束する効力がないケースがほとんどです。
2. 市の正職員は本当に「市のため」に働いているのか?
市政を動かしているのは市長や市議会だけではなく、市役所の職員も重要な役割を果たしています。しかし、彼らの働き方には問題点も多く、市民のために動いているとは言えないケースが少なくありません。
(1) 安定した雇用が目的化している
公務員は解雇されにくく、給与や福利厚生が安定しているため、一部の職員にとっては「市民のために働く」ことよりも「自分の雇用を守る」ことが最優先になっています。
(2) 縦割り行政と前例主義
市役所は部署ごとに業務が細かく分かれており、他の部署との連携が難しいケースが多いです。市民が何か問題を相談しても、「それは〇〇課の担当です」とたらい回しにされることもよくあります。また、「前例がないことはやらない」という文化が根強く、新しい試みがなかなか実施されません。
(3) 実質的に「仕事をしない職員」もいる
どの組織にもサボる人は一定数いますが、公務員の場合、解雇されにくいため、最低限の仕事しかしない人もいます。その結果、真面目に働いている職員の負担が増え、全体の効率が落ちることになります。
3. それでも市政を変えるにはどうすればいいのか?
市民が市政を変えることは難しいですが、不可能ではありません。市民の意識と行動次第で、少しずつでも市政を改善することはできます。
(1) 選挙への積極的な参加
まず、市議会議員選挙や市長選挙に積極的に投票することが重要です。ただし、誰に投票するかを適当に決めるのではなく、候補者の過去の実績や政策をしっかり調べた上で投票することが必要です。
(2) 市議会の監視と市民参加
市議会の議事録は公開されており、市民も傍聴できます。自分たちの代表が何をしているのかを知り、市民として声を上げることが大切です。また、市民団体を作り、政策提言を行うことも有効な手段です。
(3) SNSやオンライン活動の活用
インターネットやSNSを使えば、市政の問題点を多くの人に伝えることができます。オンライン署名活動や、自治体に対する意見提出など、デジタルを活用した市民運動も重要になっています。
(4) 役所との関係を築く
市役所の職員の中にも、市民のために真剣に働いている人はいます。市民として役所に意見を伝えたり、建設的な対話を試みることで、少しずつでも変化を起こすことができます。
まとめ:変えられないわけではないが、簡単ではない
市政を変えるのは簡単なことではありません。選挙制度の問題、組織票の影響、市職員の意識の問題など、さまざまな障壁があるため、短期間で劇的な変化を期待するのは難しいでしょう。しかし、それでも市政を変えたいのであれば、市民が戦略的に行動し、長期的な視点で改革を進めていくことが必要です。
「どうせ変わらない」と諦めるのではなく、小さなことからでも始めていくことが、市政改革の第一歩となるのです。